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東京高等裁判所 平成7年(ネ)1672号 判決

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件各請求は理由がなく、いずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決六枚目表六行目の「運用実績」を「資産の運用実績」と、同七行目の「但し、」を「ただし、変額保険においても、保険金額のうち」と、同九行目の「一で認定した」を「一記載の」とそれぞれ改め、同行目の「いる」の次に「が、変動保険金額は、特別勘定の資産の運用実績によって日々上下し、殊に右の運用実績が零パーセントであるときは、変動保険金額も零となるものであり、また、解約返戻金額も同様に右の運用実績によって日々上下するものである」を加える。

2  原判決七枚目表二行目の「三七、」の次に「三九、」を加え、同行目の「七、八」を「七から九まで」と改め、同五行目の「同番組は」の次に「、その中の「火曜・女の情報源」というコーナーで「自分のお金を一切使わず財産を生む方法-?」という副題の下に、」を加え、同裏七行目の「見せて」を「交付して」と改める。

3  原判決八枚目表五行目の「一郎」の次に「(昭和二七年一月二一日生)」を、同六行目の「原告に対し、」の次に「右設計書を交付して、」を、同七行目の「勧誘した。」の次に「右設計書には、基本保険金及び保険料のほか、将来の支払額を約束するものではないとのただし書付きで、特別勘定の資産の運用実績例を九パーセント、四・五パーセント、零パーセントの三つの場合に分け、経過年数に応じた死亡・高度障害保険金及び解約払戻金の変動状況が記載されていた。」をそれぞれ加える。

4  原判決九枚目表二行目の「欠陥商品」を「相続税対策効果がなく、かえって、契約者が大きな損害を被る危険性の高い商品であると」と、同四行目の「生命保険契約」を「本件変額保険」と、同五行目の「消費貸借契約」を「本件融資契約」と、同六行目の「両者」から同七行目の「あろう」までを「、右各契約は、各別にその違法性を問題とするのではなく、組み合わせられた一個の相続税対策としてその違法性を判断すべきであるとするものである」とそれぞれ改め、同八行目の「しかしながら、」の次に「控訴人が相続税対策として銀行借入による変額保険への加入を意図して、本件融資契約及び本件変額保険を締結し、その結果、」を加え、同九行目の「両者」から同一一行目の「欠く」までを「右各契約を一個の相続税対策としてみてその違法性を判断すべきものであるとまでいうことはできず、むしろ、これらの契約は、本来各別にその違法性を判断すべき」と、同裏一行目の「欠陥商品」を「は不適格なリスクの多い商品」と、同七行目から同八行目にかけての「欠陥商品」を「相続税対策として不適格なリスクの多い商品」とそれぞれ改め、同八行目末尾の次に「また、控訴人は、本件融資は、いわゆる提案型融資であり、被控訴人らは、両者協力してこの方法を考案して実行したのであるから、本件融資と本件変額保険を組み合わせたものが相続税対策とならないことについて予見可能であったと主張するが、右の組合わせが相続税対策として有効かどうかは、平成二年六月当時、いずれとも断定できないものであったことは、前記説示のとおりであるから、控訴人の右主張は、その前提を欠き失当であるといわざるを得ない。」を加え、同一一行目の「同五七年」を「昭和五七年」とそれぞれ改める。

5  原判決一〇枚目表二行目の「昭和五七年」を「同年」と、同三行目の「同四三年」を「昭和四三年」と、同四行目の「同四七」を「昭和四七」と、同五行目の「六二年」を「昭和六二年」とそれぞれ改め、同六行目の「たこと、」の次に「平成元年分所得税青色申告決算書には、貸家一四軒及び車庫一戸から合計八六七万三〇〇〇円の賃料等の収入があったことを記載していること、」を加え、同八行目の「節税を図っていた」を「納税額の適正を期していた」と、同裏二行目の「リスク」を「銀行融資を利用した変額保険のリスク」とそれぞれ改める。

6  原判決一一枚目表九行目の「保険契約者」の次に「又は被保険者」を加え、同裏四行目及び同九行目の各「運用実績」をいずれも「資産の運用実績」と改める。

7  原判決一二枚目表七行目の「趣旨」を「規定の趣旨」と改め、同八行目の「保険契約者」の次に「又は被保険者」を加え、同一〇行目の「安全性のある」を「一定額の保険金額、解約返戻金額が保証されている」と改める。

8  原判決一三枚目表五行目の「い。)。」の次に「そして、前記認定の控訴人の経歴、資産形成能力、これらからうかがえる知的能力等からすれば、控訴人は、右設計書等を通読し、小泉の説明を聞くことにより、詳細はともかく、変額保険の前記のような特質及び基本的仕組みを理解し得たものというべきである。」を加え、同裏二行目の「運用実績」を「資産の運用実績」と改める。

9  原判決一四枚目表六行目の「原告死亡時に」を「被保険者ではない控訴人が死亡しても」と、同行目の「おりない」を「支払われない」と、同八行目の「下りる」を「支払われる」と、同裏一行目から同四行目までを

「控訴人は、菊地は、募取法九条に違反して、本件変額保険の勧誘という募集行為を行ったと主張する。

募取法九条は、損害保険会社の役員、使用人又は同法四条二項の規定により登録された生命保険募集人若しくは損害保険代理店でないものは、募集を行うことができないと規定し、同法二条三項によれば、右募集とは、保険契約の締結の代理又は媒介をなすことをいうものである。しかして、前記認定のとおり、菊地は、控訴人からの相続税対策としての銀行借入による変額保険加入の是非についての問合わせに応じて保険料一括払いの生命保険の趣旨、利用方法等についての一般論の説明及び変額保険に加入するための銀行融資が可能であることの報告をするとともに、小泉を控訴人に紹介したにとどまり、これを超えて、控訴人に対し、募取法にいう募集をしたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、控訴人の右主張は失当といわざるを得ない」とそれぞれ改める。

二  よって、当裁判所の右判断と同旨の原判決は相当であり、本件各控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 吉戒修一 裁判官 大工 強)

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